N-Wave VOL.116
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岐阜県美濃市 美濃和紙の里会館と澤村正氏の工房を訪ねて 5した。紙がきれいだから、技術が優れているからというのでは、それは登録の理由にはならないそうです。日野 世界に何か良い影響が必要ということですね。清山 そうなんです。登録してどう良い影響があるのかというところをみんな本当に悩みました。日野 登録には大変なご苦労があるようですね。今日は貴重なお話をありがとうございました。それでは澤村さんにお会いしてきます。本美濃紙保存会名誉会長 現役紙漉き職人 澤村正さんに聞く日野 今も現役で紙漉きをされていらっしゃるとお聞きしておりますが、おいくつになられたのでしょうか。澤村正氏(以下 澤村) はい、現役でやっています。15歳から手伝い始めて現在91歳です。たったの75年です。おそらく90歳を超えて現役で漉いてるのは、わし1人でしょう。日野 75年を「たった」と言うのですか澤村 なぜそういうことを言うかというと、1300年経っている中で、その技術を自分で発明したんじゃなくて、伝承しているだけでしょ。伝承しているということは体で覚えて、教えてもらったことを覚えて、それをやってるだけだから。日野 誰から伝承されたんですか。お父さんからですか。澤村 そうです。4代目になります。みんな偉い人になったなって言うけど、違うよ90歳になっても紙を漉くんだから、身体がえらい(つらい)んだよって。このごろは8時間労働って、8時間やるようになったら、ちょっと楽になった。10時間やそこら当たり前にやった。日野 毎日やってるんですか。澤村 冠婚葬祭だってなかなか……。日野 今日は休みですか。澤村 今日はあんた方が来るから休み。日野 それはえらいすみませんでした(笑)。ところで1日に何枚ぐらい漉くんですか。澤村 100枚ぐらいだね。昔は家内工業っていうものがあったんですよ。爺ちゃん婆ちゃんも子どもまでも手伝ってやってるわけです。だから真ん中の20代30代の者は和紙を漉いて、年寄りは、山の薪が要るでしょ。薪を切ったり畑をやったりして、家の手伝いをした。そして子どもは雑もの、 「ちりとり」を手伝ったりしたものです。だから上手くまわってはきたんだけど自由がないんですよ。12時間はやるのが当たり前で、朝6時から7時まで。いまでもそうやってたんやけど、それが当たり前。それも重労働って、電気がなかったでしょ。井戸水をここまで運んだりしたんですよ。日野 水はいいんでしょうね。澤村 水は日本一おいしい。飲んでみても、売ってある水よりはおいしいですよ。水だけではなく、和紙を漉くのには空気が綺麗じゃなけりゃいかん。水が綺麗なのと、ここでは空気が綺麗。空気がおいしい。日野 日当たりがいい。澤村 そして人間の心がいい。心が美しい。美しい紙を漉くという、その心がけでやってくださいと弟子には言います。物を作ればいい、勘定が合えばいい、それだけでは悪のことなんだよ。そんな話をしながら、今4人目の弟子を受けてやってるけど。重要無形文化財「本美濃紙」指定要件紙漉きの工程 原料・道具伝統的な製法・道具・原料で作られたものだけが、「本美濃紙」と認められます。一、原料はこうぞのみであること。二、伝統的な製法と製紙用具によること。1. 白皮作業を行い、煮熟には草木灰またはソーダ灰を使用すること。2.薬品漂白は行わず、填てんりょう料を紙料に添加しないこと。3. 叩解は、手打ちまたはこれに準じた方法で行うこと。4. 抄造は、「ねり」にとろろあおいを用い、「かぎつけ」または「そぎつけ」の竹簀による流漉きであること。5.板干しによる乾燥であること。三、 伝統的な本美濃紙の色沢、地合等の特質を保持すること。重要無形文化財の技術を保持し、本美濃紙を製作することができるのは本美濃紙保存会会員のみです。①川晒し・水晒し(かわさらし・みずさらし)大子那須楮の白皮を清流に数日間浸し、 自然漂白させるとともに不純物を取り除きます。大子那須楮 (だいごなすこうぞ)本美濃紙の原料は、最高級の茨城県の大子那須楮のみ使用。楮の繊維は太くて強いため、紙に適しています。原料の剥皮後の楮(こうぞ)この白皮1束(4貫15kg)から、紙の原料として使えるのは44%の6.6kg、これから330枚の和紙ができる。ねべしトロロアオイの根から抽出し、繊維を強く繋ぎ合わせてくれます。

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