N-Wave VOL.116
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(写真⑤)を通って西棟へ向かいます。書院造りを主体とした中棟から茶室建築の意匠を取り込んだ数寄屋造りの西棟への渡り廊下ということで、廊下の途中から、柱が角柱から面皮柱へと変わっていきます。西棟には、遠山氏の母の居室である12畳間や茶室としても使用されていた7畳間などがあります。西棟は、「高価な材料を使用するが意匠的にはやりすぎない」「めちゃくちゃこだわっているが、ぱっと見はそう感じさせない」という意匠になっていると思います。茶室としても利用されていた7畳間は、軒内に囲まれています。軒内とは、ガラス戸を開ければ内外が一体となる「半外の空間」で、床には黒い艶消しの敷き瓦があしらわれています。さらに、その7畳間の壁は、なんと錆び壁でした(私は今回初めて知りました)。荒木田土を木舞に塗ることで、塗り付けてから経年とともに、独特の「錆び」が浮き出ていく壁です。設計者にとって経年変化というものは、ある程度推測はできても完全にコントロールすることができないものです。そういうものをデザインに採用するとは、とても勇気のいることではないでしょうか。 遠山邸の見学を一通り終え、今度は美術館(写真⑥)へ向かいました。 美術館では、明智光秀が所持していたといわれる「青磁香炉 銘浦千鳥(写真⑦)」や『源氏物語』をベースにした八曲一双の腰屏風「源氏物語子の日図(写真⑧)」など、数々のコレクションが展示されていました。特に源氏物語子の日図は、今でもこんな綺麗な状態で見られるのかと驚くほど美しかったです。(コレクション展は終了。4月3日より特別展「遠山記念館の50年」の予定) 美術館より遠山邸に関する記述が多くなりましたが、「遠山邸の重厚さと典雅」「美術館の優雅さと静寂」をともに十分堪能しました。西洋の建築は「壁」、日本建築は「屋根」と言われますが、遠山邸はまさにその日本建築を味わえる場所でした。年に何回か、遠山邸の中棟2階が公開されることがあるとのことなので、その時にもう一度訪ねてみたいと思います。 建築デザインとは空間をデザインすることなので、実際にその場所へ行かないと感じることのできないものが非常に多くある、もっと色々な建築物を見に行かなければいけないと再認識しました。そして、「建築物が風化していくプロセスを経て、人工物が自然に同化していく」、これこそが古き良き建築物のありかたなのだろうと思いました。源氏物語子の日図 狩野晴川院養信(写真⑧)青磁香炉 銘 浦千鳥(写真⑦)美術館(写真⑥)住  所: 〒350-0128 埼玉県比企郡川島町白井沼675 電話:049-297-0007 FAX:049-297-6951開館時刻:10:00〜16:30     (入館は16:00まで)休館日:月曜日     (祝祭日の場合は開館、翌日休館)     年末年始(12月21日〜1月5日)     令和3年3月16日、4月13日、     5月7日入館料:大人800円(640円)     学生(高校・大学)600円(480円)     中学生以下無料     (  )は20名以上の団体料金施設概要渡り廊下(中〜東棟)(写真⑤)空から見た遠山邸全景(公益財団法人 遠山記念館 所蔵)20

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