N-Wave VOL.116
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遠山記念館 今回私が訪れたのは、埼玉県の川島町にある「遠山記念館」です。 まずは、遠山記念館がどんなところなのかを簡単に紹介しておきます。 遠山記念館は、日興証券(現・SMBC日興証券)創業者である遠山元一氏が、幼いころに手放した生家を再興させるとともに、母の住まいとするために建てた「遠山邸」と、遠山氏が収集した美術コレクションを展示する「美術館」からなり、それらを一般公開することを目的に開館されたミュージアムです。遠山邸は、国の重要文化財にも指定されています。 桶川駅からバスに乗り最寄りのバス停へ、そこから徒歩15分くらいで遠山記念館へ到着しました。重厚な門をくぐり、遠山邸へ向かいます。遠山邸は、千鳥破風の茅葺屋根・豪農風建築の東棟(写真①)、正式な応接空間として書院造りで造られた18畳の大広間を中央に配した中棟(写真②)、茶室建築の意匠を取り込んだ数寄屋造りの西棟(写真③)という、それぞれ造りの違う3棟を渡り廊下で結ぶという構成になっています。設計は建築家の室岡惣七、当時の最高技術と選りすぐりの銘材を使って、工期に2年7か月を費やして昭和11年に竣工しました。  東棟にある表玄関(写真④)より中へ入りますが、表玄関からすでに驚かされます。鞍馬石を使用した大きな靴脱ぎ石、一枚物の式台、欅の玉杢材を使った天井が特に印象的です。東棟の内部空間は、「落ち着いた、安らぎのある居住空間」といったところでしょうか。東棟の主室である居間18畳は、へりなし畳を敷き詰め、囲炉裏を備えた民家風のスタイルです。太い欅の柱や変化をつけた建具格子の桟が生み出す強弱のリズムが見事です。次に東棟から渡り廊下を通って中棟へ向かいます。中棟は、格調ある佇まいです。2階部分(2階内部は非公開)の高欄の意匠が華やかさを演出しているファサードです。表玄関のある東棟とは趣がぐっと変わり洗練された印象です。遠山邸の「パブリック空間」といったところでしょうか。中棟の一番の見どころはやはり18畳の大広間です。床の間・脇床も併設されています。天井板は柾目の春日杉、床柱は北山杉の天然絞り(人工絞りが発明されるまで1万本に1本と言われた貴重な天然材)、壁はガーネット・石榴石を砕いて砂にして塗っているので紫がかった色をしています。そして大広間から眺める庭園、これが絶景です。聞けば、遠山邸に使用されているガラスはすべて建築当時のままとのこと。当時、日本では作ることができなかったため、アメリカから輸入したそうです。最後に、渡り廊下私が一度行ってみたかった所〈取材/文〉 東京本社 建築本部 意匠設計部 神田 雄一表玄関(写真④)西棟 外観(写真③)中棟(写真②)表玄関(東棟)(写真①)19

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