N-Wave VOL.116
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13住院四戒方広寺派管長    安 永 祖 堂問答無用の禅問答 その七 「住院四戒」(じゅういんのしかい)と読む。中国・宋の時代の五ご祖そ法ほう演えんという禅僧が、弟子が修行を終えて一寺の住職として赴任するというので、心得ておくように説いた四つの戒めである。 どのような教えかというと、「第一に、勢い使い尽くすべからず。第二に、福受け尽くすべからず。第三に、規き矩く行じ尽くすべからず。第四に、好こう語ご説き尽くすべからず。何が故か、好語説き尽くせば人必ずこれを易やすしとする。規矩行じ尽くせば、人必ずこれを繁はんとす。福もし受け尽くせば縁必ず孤なり。勢いもし使い尽くせば、禍わざわい必ず至る。」というものだ。 おそらくはこの四つの戒めは、さまざまなビジネスの現場で働くみなさんにも役に立つアドバイスと思われる。こちらのコラム欄でも紹介しておきたい。 さて第一に心得ておくべきは、「勢いは使い尽くすべきではない、もし使い尽くしてしまったら、必ず禍が降りかかってくるであろう」ということである。私たちの長い人生には何事につけ、必ず好不調の波がある。しかし気をつけなければならないのは、むしろ物事が上手く運んでいる、イケイケどんどんの絶好調の時だ。実は破局の種はそういう運気の頂点にこそ蒔かれている。 シドニーオリンピックマラソン金メダリストである髙橋尚子さんの座右の銘に「丸い月夜も一夜だけ」というのがあるそうだ。大会で優勝して喜んでも、次の日からはまた黙々と走り込む。浮かれてなんかいられないということなのだろうが、この教えに通じるものがあるのではないだろうか。 特にお互いに若いときはついつい勢いにまかせて調子に乗り、周囲の助言も聞く耳持たずに突っ走ってしまう場合もある。また未熟な者がたまたま立場を得たり、権力を手にしたりするとかえって危険な例がある。まさに調子のよい時こそ試練の時なのだと自戒しなければならない。 第二に気をつけなければならないのは、「福は受け尽くすものではない、もし受け尽くしたら必ずやそれが縁の切れ目となって自分のまわりに人が寄り付かなくなってしまうであろう」という教えである。手柄を独り占めにするものではない。それをすると周囲から人がいなくなってしまう。上手く出来たのは、私の力ではない。すべて皆さんの

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